機械翻訳や自動翻訳が性能アップするにつれ、ポストエディットの需要がどんどん大きくなってきました。
ポストエディットのやり方も、洗練されてきており、「ISO18587」というポストエディットの国際基準も登場しています。
しかし、ポストエディットのやり方は実際、各ポストエディッターや各翻訳会社によって違います。
たとえばポストエデットは、機械翻訳の精度が高くなったので、学生のアルバイトにやらせようという動きがあります。
一方で、翻訳業務に精通しているプロの翻訳家でなければ、危険だと主張している専門家もいます。
学生だと時間単価が安くなるメリットがありますが、精度に不安が残りますよね。
プロの翻訳家は、一定レベルの品質は保証されますが、時間単価が高い上に彼ら自身がポストエディット導入に積極的では無いのです。編集作業に意外に工数がかかりますし、翻訳の仕事が減るからです。
ポストエディッターが誰がやるのかは、求める品質によって変わってきます。また、担当するポストエディッターよって作業内容も変わってきます。
ただ、基本的なやり方は、どこでも同じです。
本記事では、以下のことを解説しています。
- ポストエディット作業の一般的なやり方
- ポストエディットの国際基準「ISO18587」とは?
- 私たちがやっているポストエディットのやり方
機械翻訳のポストエディット作業の一般的なやり方は?
現在、ポストエディット作業は、プロの翻訳家が兼任する場合が多いようです。翻訳会社がポストエディットサービスを提供するのが一般的だからです。
では、一般的にどのようにポストエディットをやっているのでしょうか?
大きく分けて以下の2点です。
- 品質レベルを別け、作業内容を明確する。
- プリエディットする。
品質レベルを別ける
品質レベルは一般的に、ライトポストエディット(ライトPE)とフルポストエディット(フルPE)に別れています。
ライトポストエディットは、訳文に対して誤訳や不自然さをチェックし、修正します。つまり、言葉として意味が通じるようにします。
フルポストエディットは、文法や訳抜けなど原文と訳文が一致するように作業します。表記の揺れなどもチェックし、さらに翻訳文の完成度も高めます。
当然、フルポストエデットは、機械翻訳の訳出精度によっては普通に翻訳するより料金が高くなることが珍しくありません。
以下のように、3段階にレベル別けしている会社もあります。
ローレベル | 原文の意味が伝わるか。 |
---|---|
ミドルレベル | +読みやすい表現になっているか。文法的におかしくないか。 |
ハイレベル | +用字用語の統一が取れているか。 |
原文と訳文の整合性というより、翻訳文の読みやすさや美しさを基準にレベル別けしていますね。
他には、ポストエディッター(作業者)側の視点で、負荷の大きさによってレベル別けをしているケースもあるようです。
いずれの場合でも品質レベルを定めることで、作業内容を標準化し、誰がやっても同じ品質になるようにポストエディットします。
プリエディットする
機械翻訳や自動翻訳は、翻訳スピードが人とは月とスッポン。
納期短縮とコストダウンというメリットがあります。
しかし、原文に癖があると、機械翻訳のアウトプットがひどいものになって、ポストエディッターに大きな負荷が掛かります。
機械翻訳は、微妙なニュアンスの読み取りや、イレギュラーな表現が苦手なので、原文が荒れていると、ひと昔前の機械翻訳の訳文のようになってしまいます。
そこで、プリエディット、つまり事前に機械翻訳エンジンが翻訳し易いように、原文を修正します。
たとえば日本語から英語に翻訳する場合、意識的に主語を明確にします。
日本語は、主語が省略することが多いためです。AIが理解し易い言葉に調整することで、翻訳の品質を向上させるのです。
ところが、プリエディットは翻訳エンジンが決まっている場合は有効だけれども、色々な翻訳エンジンを使う場合は、ノウハウが蓄積されません。
昔の機械翻訳では、プロ・アマ問わずプリエディットする人が多かったと思いますが、翻訳エンジンが多様化する今後は、プリエディット作業が減っていくことが予想されます。
ポストエディットの国際基準「ISO18587」とは?
最近、世界規模で機械翻訳を使う機会が増えてきました。
そこで、ポストエディットに関する「ISO18587」という国際基準が設けられ、2017年4月に正式版がリリースしました。
「ISO18587」は、以下の内容が規定されいます。
- 目的や概要
- 作業プロセス
- 修正レベルと修正観点
- ポストエディッターの資格
- ポストエディッターの教育の観点
「ISO18587」を取得している会社は、機械翻訳のポストエディットの品質が一定の水準を満たしていると、言えます。
しかし、私が知る限り、日本の翻訳会社で「ISO18587」を取得している会社を知りません。
ポストエディッターという職種がもっとポピュラーになっていけば、取得する会社も増えていくでしょう。
翻訳系のISO17100を取得していても、ポストエディット作業の品質が保証されているわけではありません。間違えないように、注意してください。
ぼくが提案するポストエディットのやり方
機械翻訳ポストエディットは、ぼくなら以下のようにやります。
- ライトポストエディットを採用。
- 英日翻訳(英語⇒日本語の翻訳)のみ対応している。
- 原文のチェックは、誤訳が発生し易いカタカナと、意味が明らかにおかしいところのみ行っている。
- 文法的に正しく、読みやすい日本語にする(場合によっては意訳)。
もしかしたら一般的なライトポストエディットよりも、品質レベルは高いかもしれませんが、原文の英語を一字一句チェックしたり、訳漏れがあるかなどのチェックは行いません。
またポストエディットは、英日翻訳に特化した方が良いでしょう。
英日翻訳と日英翻訳は、作業内容が変わってくるので、ノウハウが蓄積されにくく、管理が煩雑になるからです。
ぼくは、翻訳家ではなくライターなので、日本語の完成レベルは一ランク上を目指したいですね。
ポストエデットの流れは以下の通りです。
- 機械翻訳をする、または翻訳データを提供してもらう。
- 訳文をざっと流し読みして、文章全体の意味をざっくりとつかむ。
- 訳文を一文ずつ読みながら、日本語が正しく読みやすくなるように修正する。この際、意味が明らかにおかしいところをチェックしておく。
- チェックしたところやカタカナを原文で確認し、訳文を修正する。
以上です。作業は、とてもシンプルなものになります。
なお、ポストエディットの場合は、翻訳証明書を発行してもらうのは難しいと思います。
公的文書などの翻訳は、専門の翻訳会社に依頼してください。
まとめ
ポストエディットのやり方について、まとめました。
プリエディットなど色々な手法がります。
でも、品質レベルを設定し、作業内容を具体的にして、誰が作業をしても同じ品質のものを作るのが基本中の基本です。
ポストエディットの必要性が増し、実施するところが増えてくれば、手法ももっと洗練されていくでしょう。