ライティング講座 その6は、ダブルバインドを使った文章テクニックです。
ダブルバインド(Double bind)とは、二重拘束という意味で二つの矛盾した命令をすることで、精神状態をロックして身動き取れないようにして要求を通します。
一般的には、セールスマンやナンパ師が使いますが、文章でも使えます。今回は、ダブルバインドの文章例と思ってもらえば幸いです。
使うことに抵抗がある人は無理に使わなくてもOKです。自分を守るために知っておくだけで十分でしょう。
由実さんへの課題「ダブルバインド」

作成条件
「バインド bind」という心理テクニックを使って提案文を作成してください。
その際、文章構成に意識します。
バインド文+提案文
バインドを使うと、不自然な日本語になることが多いので、いかに自然な文章を書くかがキモとなります。想像以上に難しいと思います。
テーマは自由です。
締め切り:1週間以内
バインドとは
バインドとは、縛るという意味です。例えば、お願い事がある場合、別のことに意識を向け、その隙に本来の提案をします。
人間は、2つのことを同時にすることが苦手です。意識を別に向けて、理性が十分に働かない状態にしておいて本来の提案をします。ボクシングでいうフェイクやフェイントと同じです。
例 由実さんをご飯に誘うとき
明日、いよいよ東京グールという映画公開です。由実さんは原作好きでしたよね。映画チケットが手に入りました。
ところで、明日、時間あったらご飯行きましょうよ。美味しいパスタ屋を見つけました。
19時に、二子玉川駅の改札で良いですか?
解説
あんまり上手くありませんが、こんな感じです。前半部分で映画に意識を向けます。そして後半部分で本来の提案をします。
提案が通りやすくなります。理性が働きにくくなるからです。
由実さんの提出文

[バインドを使った文章例]
先日はヨットに乗せていただき、ありがとうございました。手作りバーガーがとても美味しかったです。
さて、学会でご紹介した◯◯先生が御社のソフトに興味をお持ちです。評価用のソフトとして、ご提供いただくことは可能でしょうか?
ご検討のほど、よろしくお願い致します。
来月の学会で、またお会いできるのを楽しみにしております。
夏川の回答・解説

こういう課題って、ぼくの方が勉強になりますね。気づくことが多いです。
由実さんの文章は、バインド文と提案文の繋がりがとてもスムーズです
しかし、あまりにも自然な繋がりになっているため、バインド文がバインド(意識を縛り付ける)の働きをしていません。
親切に読者の意識を提案文に誘導しているのです。ぼくの例が悪かったのかもしれませんが、「バインド文が主で、提案文がおまけみたい」に書いた方が良いでしょう。
先日はヨットに乗せていただき、ありがとうございました。手作りバーガーがとても美味しかったです。今度は是非、私にもご馳走させてください。私も料理が得意です
さて、先月の学会でご紹介した◯◯先生が御社のソフトに興味をお持ちです。評価用のソフトとして、ご提供いただくことは可能でしょうか?
ご検討のほど、よろしくお願い致します。
前半部分では、「今度は是非、私にもご馳走させてください。私も料理が得意です。」を追加しました。相手が喜びそうな言葉を並べて意識を集中させるためです。
後半部分では、「来月の学会で、またお会いできるのを楽しみにしております。」を削除し、前半部分に移動しました。ここでは余計なことを省き、さらっと書きます。強い言葉も避けます。
由実さんの返信

なるほど、バインドはちょっと詐欺っぽいイメージを強く持った方が良さそうですね。
言いづらい事を言うためにワンクッション置くイメージをしていました。
まとめ(ダブルバインド例)
ダブルバイントを使った文章テクニックを紹介しました。由実さんの返信にもあったように「詐欺」のイメージを持つ人もいます。
文章は、書いている人の気持ちがもっとも大事なので、罪悪感がある人は心理テクニックは使わない方が良いでしょう。
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