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文章の分け方|新森&由実さん編【ライティング講座 その11】

文の分け方 無料ライティング講座

ライティング講座 その11は、文章の分け方です。
長い文を複数の文章に分けます。

最近では珍しいですが、昔は一文のかなり長い文章家がいました。スキルがあったら、たとえ長くてもそこそこ読みやすいのですが、そうでなかったら一文を短くした方が読みやすいし、失敗がありません。自信が無い限りは、適度な長さで切ってください。

長い一文を読みやすく書く方法については関連記事を参照してください。

では、早速講座に入っていきましょう。

なお、本課題は新森さん用に出したものですが、向学心熱心な由実さんもやりたいというので、許可しています。

新森さんへの課題 「文章の分け方」

課題

次の文章を複数の文に分けてください。

「ここへ来たのは初夏の頃で、鉄の格子の窓から病院の庭の小さい池に紅い睡蓮の花が咲いているのが見えましたが、それから三つつき経ち、庭にコスモスが咲きはじめ、思いがけなく故郷の長兄が、ヒラメを連れて自分を引き取りにやって来て、父が先月末に胃潰瘍でなくなったこと、自分たちはもうお前の過去は問わぬ、生活の心配もかけないつもり、何もしなくていい、その代わり、いろいろ未練もあるだろうがすぐに東京から離れて、田舎で療養生活をはじめてくれ、お前が東京でしでかした事の後始末は、だいたい渋田がやってくれた筈だから、それは気にしないでいい、とれいの生真面目な緊張した口調で言うのでした。」

<太宰治「人間失格」から抜粋>

作成条件

  • 複数の文章に分ける。その際、多少言葉を変更してもOK。
  • 一週間以内に提出すること。

よろしくお願いします。

「文章の分け方」新森さんの提出文

「ここへ来たのは初夏の頃で、鉄の格子の窓から病院の庭の小さい池に紅い睡蓮の花が咲いているのが見えました。それから三つつき経ち、庭にコスモスが咲きはじめた頃、思いがけなく故郷の長兄がヒラメを連れて自分を引き取りにやって来ました。

父が先月末に胃潰瘍でなくなったこと、自分たちはもうお前の過去は問わぬ、生活の心配もかけないつもり、何もしなくていい、その代わり、いろいろ未練もあるだろうがすぐに東京から離れて、田舎で療養生活をはじめてくれ、お前が東京でしでかした事の後始末は、だいたい渋田がやってくれた筈だから、それは気にしないでいい、とれいの生真面目な緊張した口調で言うのでした。」

夏川の回答・解説(新森さん編)

ここへ来たのは初夏の頃で、鉄の格子の窓から病院の庭の小さい池に紅い睡蓮の花が咲いているのが見えました。それから三つつき経ち、庭にコスモスが咲きはじめた頃、思いがけなく故郷の長兄がヒラメを連れて自分を引き取りにやって来ました。

新森さんの提出文

→ここは良くできました。「しかし」で繋いでいたらアウトです。

「見えましたが、それから」
元の文章は、接続助詞「が」を使っていましたが、逆接の意味ではなく単純接続の意味です。「そして」や「それから」などと同じなので間違えないでください。

接続助詞「が」は、逆説だけでなく順接の意味もある。

「父が先月末に胃潰瘍でなくなったこと、自分たちはもうお前の過去は問わぬ、生活の心配もかけないつもり、何もしなくていい、その代わり、いろいろ未練もあるだろうがすぐに東京から離れて、田舎で療養生活をはじめてくれ、お前が東京でしでかした事の後始末は、だいたい渋田がやってくれた筈だから、それは気にしないでいい、とれいの生真面目な緊張した口調で言うのでした。」

新森さんの提出文

これだけで200字近くありますので、分けた方が良いでしょう。読点「、」を句点「。」に変えるだけでOK。

会話文でもカッコを付ける必要はありません。村上龍が多用して認知されていました。芥川賞作品「限りなき透明に近いブルー」では、カッコを外すことで幻想的な雰囲気を出すことに成功しています。以上です。

今回の太宰治の文章はどうでしたか? 一文が長い割には、リズミカルで読み易かったのでは無いでしょうか。実は長い一文は、感情的な文章を書くのに適しています。
最近、短い文が良いとされているのは、アメリカのハードボイルドの影響です。
「客観的で簡潔な描写で記述する手法・文体」
日本語に訳すと、かた茹で卵です。感情を排除した文章だから、ビジネス文章に向いています。ヘミングウェイが元祖ですが、ハメットやチャンドラーもハードボイルドの文体を採用しています。

新森さんの返信

解説ありがとうございます。面白かったです(o^^o)
お兄さんの会話のところはどーしようかと思ったのですが、そーすれば良かったんですね。

ありがとうございます(moon grin)

由実さんへの課題「文章の分け方」

由実さんの提出文「文章の分け方」

[太宰治「人間失格」抜粋文を、複数の文章に分ける。]
また新森さんへの課題、便乗させていただきます。

複数の文章に分けたもの

「ここへ来たのは初夏の頃で、鉄の格子の窓から病院の庭の小さい池に紅い睡蓮の花が咲いているのが見えました。それから三つつき経ち、庭にコスモスが咲きはじめ、思いがけなく故郷の長兄が、ヒラメを連れて自分を引き取りにやって来ました。

父が先月末に胃潰瘍でなくなったこと。自分たちはもうお前の過去は問わぬ、生活の心配もかけないつもり。何もしなくていい。その代わり、いろいろ未練もあるだろうがすぐに東京から離れて、田舎で療養生活をはじめてくれ。お前が東京でしでかした事の後始末は、だいたい渋田がやってくれた筈だから、それは気にしないでいい。とれいの生真面目な緊張した口調で言うのでした。」
以上です。

よろしくお願いしますm(_ _)m

夏川の回答・解説(由実さん編)

解説

由実さんも新森さんと同じで間違いがなく、特に修正するところもありませんでした。

ですので、今回は文章を分けるコツだけ紹介します。
文を細かく分けるときは、語尾に注意します。「~でした。~でした。」と同じ調子で繰り返すのは耳障りで好ましくありません。
※小説で珍しくないのは、翻訳文の影響です。

日本語の場合は、現在形語尾でも過去を表現できますので、色々混ぜると良いでしょう。

語尾は単調にならないように変化させる。

最後に、参考文を載せておきます。

<参考文>

「ここへ来たのは初夏の頃です。鉄の格子の窓から病院の庭の小さい池に紅い睡蓮の花が咲いているのが見えました。それから三つつき経ち、庭にコスモスが咲きはじめます。その頃、思いがけなく故郷の長兄が、ヒラメを連れて自分を引き取りにやって来ました。

『父が先月末に胃潰瘍でなくなった。自分たちはもうお前の過去は問わぬ。生活の心配もかけないつもり。何もしなくていい。その代わり、いろいろ未練もあるだろうがすぐに東京から離れて、田舎で療養生活をはじめてくれ。お前が東京でしでかした事の後始末は、だいたい渋田がやってくれた筈だから。それは気にしないでいい』
とれいの生真面目な緊張した口調で言うのでした。」

由実さんの返信

ありがとうございます!
語尾に変化をつけること、常に意識するように気をつけてみます( ̄^ ̄)ゞ

まとめ(文章の分け方)

文章の分け方で重要ポイントは以下の通りです。
接続助詞「が」は、逆説だけでなく順接の意味もある。
語尾は単調にならないように変化させる。

ノウハウ的なことだけを覚えても使えるようにはなりません。必ず、練習してください。

たとえば雑誌などを買ってきて短い文を長くしたり、逆に長い分を短くしたりします。継続して努力することで文章は驚くほど上達します。

次の講座は、以下のリンクへ!

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